油圧システムでは、どのフィルターも重要な機能を果たします。 油圧システムでは、オイルが各コンポーネントに流れ込む前と後の油圧回路の各段階で、フィルトレーションされる設計が理想的です。 実際には、コスト、物理的スペース、システムの圧力を下げる必要性により、機械が効率的に収容できるフィルターの数は限られます。 メーカーは可能な限り効率的でコスト効果が高くなるように、システムを設計します。
こうした制約により、フィルトレーションの設置場所を決めるのは簡単なことではありません。 フィルトレーションの度合いには次の要因が左右します。
サクションストレーナー
通常、油圧オイルタンクに装着され、昆虫、ナットやボルトなどの目に見える大きな異物(150ミクロン以上)がポンプに侵入するのを防止することを唯一の目的として使用されます。 油圧オイルをプレフィルトレーションし、容器をシールで密封し、TRAPブリーザーを使用すればサクションストレーナーは不要であると主張する人もいます。 しかしながら、わずかとはいえ、大きな異物が油圧容器に入る可能性はあるので、低コストのサクションストレーナーを使用する価値はあります。 高価な油圧ポンプが広範囲にわたって損傷しないよう防止することができます(機器のオーナーにとってはダウンタイムコストの削減は言うまでもありません)。 また、気泡が油圧回路に侵入しないよう、サクションストレーナーが機能している例も見られます。
低圧またはサクションフィルター
サクションフィルターは通常スピンオン式フィルターを使用し、容器とポンプの間に配置してポンプに有害な汚染物質物が侵入するのを防止します。 他のタイプのフィルターと比べて、メンテナンス性に優れており、低コストです。 一方、キャビテーションを引き起こす恐れがある、ポンプのサクションラインの圧力低下を防ぐため、サクションフィルターは同じ流量の「リターン」または「圧力」フィルターと比べて大幅に開放される(ミクロンサイズが大きい)傾向があります。
高圧フィルター
カートリッジ式のフィルターで、ポンプの下流を流れる流体をフィルトレーションし、サーボバルブやアクチュエーターなどの高価なコンポーネントを保護します。 高圧フィルターは、壊滅的なポンプ障害が発生した場合、油圧回路内の最も高価なコンポーネントを保護します。そのため、きわめて重要な(ROIが最も優れた)フィルターです。 トラクターから建設、採鉱機器、林業に至るまで、ほとんどの業界の用途で使用されています。
高圧フィルターの欠点の1つは、皮肉なことに、高圧であることです。 このフィルターのハウジングは450 bar/6,500 psiの圧力に耐える必要があるため、頑丈な鋳鉄製で、取り扱いが難しく、メンテナンスが困難になります。 二重構成が使用され、厳格な安全慣行に従わない限り、高圧フィルターをメンテナンスするには、油圧システム全体をシャットダウンする必要があります。
スピンオン式フィルターのヘッド(アセンブリーに装着するフィルターの上の部分)には、ねじ山が付いており、下のヘッドを回転させて緩めたり締めつけたりできます。 カートリッジボウル式フィルターはヘッドと独立したハウジングで構成されています。 エレメントは、ハウジングの下部のボウル部分の内側にあります。
スピンオン式フィルターの交換時には、エレメント全部を廃棄します。 メンテナンスは短時間で簡単にすみますが、交換用フィルターエレメントはカートリッジボウル構造のものよりも高価です。 カートリッジボウルエレメントの交換は、廃棄される材料が少ないため無駄が少なく、通常、エレメントのコストを抑えることができます。 機器メーカーは、車両の組み立てコスト、車両の運用コスト、環境への影響、メンテナンス性の間のトレードオフのバランスをとる必要があります。
容器用ブリーザー
ブリーザーは、大気または空中の汚染物質が油圧容器に侵入するのを防ぎます。 機器の通常循環中にアイドリング中の液温が下がると、容器内の液面が変化するたびに、容器に空気が入ります。 ブリーザーは、3ミクロンを超える粒子がシステムに入るのを防ぐ設計になっています。 ブリーザーフィルターは忘れられがちな存在ですが、他の油圧フィルトレーションよりもコスト面で大きなメリットがあるとされており、 油圧システムの重要なコンポーネントでもあります。 ドナルドソンT.R.A.P.ブリーザーには、粒子と水分の両方を除去する機能があり、長期的運用と運用コストの削減に不可欠です。
オフラインフィルトレーション(キドニーループと呼ばれることもあります)
メインの油圧システムが稼働中かどうかにかかわらず、流体をフィルトレーションできる定常状態の流れを維持することにより、非常に微細なフィルトレーションが可能になります。 キドニーループは稼働時間が鍵を握る重要な市場で採用されることが多く、油圧ドレンの間隔を延長するために使用されます。
残念ながら、キドニーループフィルターは油圧回路の外側で動作するため、コンポーネントを直接保護しません。 また、通常、近くに外部電源が必要です。
修理工場で目の前にある機械には、上記のフィルタータイプすべてまたは一部が装着されている可能性があります。 油圧システムが組み込まれた機械を所有・使用する者は、フィルトレーションと定期メンテナンスが担う重要な予防機能を理解して、フィルトレーション不足によって、機械内に装着された高額なコンポーネントが損傷を受けないよう徹底する必要があります。 メーカーの推奨に従って高品質の油圧フィルターを選択することはベストプラクティスでもあり、通常、機器を所有するうえで経済的にもメリットとなります。
油圧フィルターの選択に関するご質問は、ドナルドソンの専門家にお問い合わせください。