ドナルドソンのプロセスフィルトレーション担当、Richard Juskowiak
スチームは食品・飲料加工に広く使用されています。 通常、高温のスチームは細菌の増殖を防ぎますが、別の種類の汚染が発生する可能性があります。 粒子、錆、スケール(うろこ)がシステム機器内に発生する可能性があり、スチームを再循環させたときにこれらのリスクが高まります。 スチームラインではフィルトレーションが不可欠であり、特に高圧・高温用途ではフィルトレーション方法の選択が鍵となります。
従来、炭素はスチームフィルトレーションメディアとして1950年代から長きにわたって使用されてきました。 炭素は、最高温度260° C/500° Fおよび最大圧力27.5 bar/400ポンド/平方インチゲージ(psig)の条件下で使用できます。
しかし、紙やすりのような質感を持つ粒状のカーボンチューブを使用する際に、炭素粒子が脱落する場合があります。 対照的に、高品質のステンレス鋼は高圧に耐え、最高371° C/700° Fでの使用が定格となっています。 ステンレス鋼フィルターは、交換するまでに超音波クリーニングを最大6回も実施できます。
これらの特長により、ステンレス鋼は次の3つの使用例に最適です。
スチーム機器における共通の課題は、水撃の制御です。 この現象は、冷却したシステムが急激に再加熱され、蓄積した凝縮水がシステム内を通過するときに発生します。 水撃の力により、途中に設置されたバルブ、ジョイント、フィルターが損傷する可能性があります。 圧力や速度が急激に変化することで、水撃が発生することもあります。
最近、複数の大手乳製品加工メーカーで、水撃の発生後に製品の下流で炭素粒子が発見されました。 そこで、既存のフィルターハウジングに適合する代替品を探してほしいと、ドナルドソンのプロセスエンジニアに連絡が入り、 ひび割れ、チッピング、粉砕に対する耐性が高いステンレス鋼の使用をお勧めしました。
乳製品加工メーカーは、スチームラインでのフィルトレーションを求める低温殺菌牛乳条例(PMO)により規制を受けています。 この条例は1950年代に起草され、数十年前の市場で普及していた特定のブランドのカーボンフィルターが指定されています。 ただし、この条例では、同様の捕捉特性を持つ「同等の」フィルターを使用することも認められています。
ドナルドソンは、乳製品業界からの要求と前述の炭素排出の事例を契機とし、このニーズに応えるためにP-GSL Nフィルターのラインアップを拡張しました。 この代替品は、PMO規制に適合するプリーツステンレス鋼で、ほとんどの旧式カーボンチューブハウジングに収まるサイズです。 フィルターハウジングはより大きなスチームシステムに接続されているため、互換性の高いP-GSL Nエレメントにより、高価な改造をすることなくPMO準拠の鋼エレメントに設備をアップグレードできます。
食品にスチームを注入する、または食品加工機器の清掃・滅菌にスチームを使用する工程において、調理用グレードのスチームを使用することが義務づけられています。 食品加工における主要標準化団体である3-Aは、2ミクロン以上の粒子の95%をフィルター除去したスチームを調理用グレードとして定義しています。 P-GSL Nフィルターはこのミクロン範囲で、3-Aの要件を超える99.9%の効率を達成しています。
また、この規格ではステンレス鋼のフィルトレーションも義務づけられています。これは、このメディアが繊維を放出せず、プロセスに浸出する可能性のある結合剤、接着剤、添加剤または表面活性剤を使用せずに製造されるためです。 通常、調理用グレードのスチームラインでは、 プレフィルトレーションで25ミクロン以上の粒子を除去してから、2ミクロンの各用途別フィルターを使用する、2段階のスチームフィルターが推奨されます。
最後に、P-GSL Nステンレス鋼フィルターは、エネルギーコストの削減に役立ちます。 エレメントの透過許容度が厳しいほど、メディア内にスチームを押し込むために必要なエネルギーが大きくなります。 プリーツ構造を採用したP-GSL Nフィルターは、カーボンフィルターと比べてフィルターの表面積が大きくなります。ラボ試験によると、同等のカーボンチューブフィルターと比べて差圧が8分の1に減少します。
スチームシステムに規制上の課題や水撃による破損リスクがある場合は、ステンレス鋼のスチームフィルターを検討する価値があります。 ステンレス鋼のスチームフィルターは耐久性にも優れています。規格にも準拠しており、再生可能で省エネ効果も発揮します。 初期費用はカーボンチューブフィルターの方が低いものの、投資収益率はステンレス鋼のP-GSL Nフィルターの方が格段に高くなる可能性があります。